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YouTubeゲーム実況者まとめ (日本語編)

 以下は2016年に某所にアップロードしたものですが、そちらがサービス終了とのことでここに転載しておきます。


日本のゲーム実況界はニコニコ動画を中心に回っているようなところもありますが、無料で高画質動画が楽しめるYouTubeでの日本語ゲーム実況者についてまとめてみました。

凡例:
以下の評価は評者の独断と偏見によるもので、目安程度にご覧ください。
5段階評価ですが、2つ星くらいが平均という感じにお考えください。

視聴者層 : 主に実況しているゲームの傾向や語りの感じから想定視聴者の年齢層を記載。
顔出し  : 実況者が素顔を公開しているかどうか。「動画上で顔出し」は実況中の様子を動画にワイプ等で載せている場合です。
得意分野 : その実況者が得意としていると思われるゲームの分野。
代表作  : その実況者が人気を獲得したきっかけとなった実況動画などのゲームタイトルや、定番的にプレイしているゲームタイトルなど。
視聴者数 : YouTubeのチャンネル登録数と平均再生数。平均再生数はざっくりの数字です。
更新頻度 : 動画のアップロード頻度。
バラエティ: 一定数の動画あたりの実況しているゲームの種類数。
プレイ技術: 実況者の動画中におけるゲームプレイの上手さ。リハーサルや練習をしているかどうかは考慮していません。
長篇完走率: 長篇ゲームを最後までクリアしている割合。途中で投げ出しているゲームが多い場合のほか、そもそも長篇ゲームをあまりプレイしていない場合もここを低くしています。
トーク話術: 実況の話の面白さや、滑舌の良さなど。
トーク声質: 主観的な評価ですが、声の良さ。基本的に地声だと低め、声を作っている人だと高めになります。
編集傾向 : ハイライト志向(面白くないところは大胆にカットする)・臨場感志向(極力カットしない)の別
動画品質 : 編集技術や画質、サムネイルなど主に絵面の評価。
広告頻度 : 動画上に広告が表示される頻度。特に、動画中にさしこまれる動画広告の間隔。

ヒカキン

日本を代表するYouTuberの一人。話術巧みなエンターテイナーだが、ゲーム実況者として見ると中途半端かも。基本的には子供向けという感じ。

視聴者層 : ローティーン
顔出し  : 動画上で顔出し
得意分野 :
代表作  : マインクラフト
視聴者数 : ★★★★★ (登録数200万弱・平均再生100万)
更新頻度 : ★★★★  (ほぼ毎日)
バラエティ: ★★    (マインクラフトやスマホゲームなど一部のゲームに偏っている)
プレイ技術: ★    
長篇完走率: ★     (単発志向)
トーク話術: ★★★★★ (流石にYouTuberの第一人者)
トーク声質: ★★★  
動画品質 : ★★★★  (画質1080p60)
広告頻度 : ★★★

2BRO (弟者)

兄者氏・弟者氏の兄弟と、その友人おついち氏で運営されている実況チャンネル。特に弟者氏の実況が人気。
弟者氏は、ゲーマーらしい実況者の中では現在日本を代表する実況者の一人と云える。大塚明夫のような渋い声質に定評があり、以前はよく『メタルギア・ソリッド』シリーズの主人公スネークのマネで、動画アタマに「待たせたな!」と云っていたが、最近はあまり云わなくなった。

視聴者層 : ハイティーン以上
顔出し  : なし。イベント出演時もヘルメットで隠していた
得意分野 : FPS, TPS
代表作  : DOOM3, Wolfensteinシリーズ, メタルギアシリーズ, Slenderシリーズ他
視聴者数 : ★★★★★ (登録数100万強・平均再生30万弱)
更新頻度 : ★★★★★ (毎日複数本)
バラエティ: ★★★★★ (次々に新作メジャータイトルを実況・一方でレトロゲームなどもカバー)
プレイ技術: ★★★★  (普通に上手い)
長篇完走率: ★★★★★ (原則エンディングまで完走)
トーク話術: ★★★★  (弱腰系)
トーク声質: ★★★★★ (声優のような声)
編集傾向 : ややハイライト志向
動画品質 : ★★★★  (画質1080p60)
広告頻度 : ★★★★  (少ない方)

赤髪のとも

公式には男性ということになっているが、声・語彙など女性としか思えない実況者。ニコニコでも生放送しているが本籍はYouTube。想定視聴者層はローティーン向けとハイティーン向けの中間。複数人で実況することも多いが、これは好みが分れるかも。

視聴者層 : ローティーン~ハイティーン
顔出し  : 別チャンネルでマスク付きで顔出し
得意分野 : マルチプレイ
代表作  : マインクラフト, GTA5マルチプレイ
視聴者数 : ★★★★★ (登録数100万強・平均再生30万弱)
更新頻度 : ★★★★  (毎日1~2本)
バラエティ: ★★   
プレイ技術: ★★  
長篇完走率: ★★   
トーク話術: ★★★  
トーク声質: ★★★   (女性のような声。複数人プレイのとき賑やかなのは好みが分れるかも)
動画品質 : ★★    (画質720p)
広告頻度 : ★★★★  (少ない方)

アブ

話術がウリ。本籍はニコニコ動画で、そちらでは有料チャンネルを開設。YouTubeにアップロードしているのは一部だけなので、チャンネル登録数などは控えめだが、人気の実態はそれ以上。

視聴者層 : ローティーン
顔出し  : なし
得意分野 :
代表作  : 妖怪ウォッチシリーズ, マインクラフト, ドラゴンクエストビルダーズ, マリオメーカー
視聴者数 : ★★★★★ (登録数50万強・平均再生20万。但しYouTube分のみ)
更新頻度 : ★★★★★ (毎日1~2本)
バラエティ: ★★    (YouTubeは種類少な目)
プレイ技術: ★★    (技術の必要なゲーム自体少ない)
長篇完走率: ★★★
トーク話術: ★★★★★ 
トーク声質: ★★★ 
編集傾向 : ややハイライト志向
動画品質 : ★★   (画質720p)
広告頻度 : ★★★★  (少ない方)

キヨ。

ニコニコ動画に有料チャンネルを開設。YouTubeにも動画をアップロード。
アブと立ち位置が似ているが、若干元気がよすぎる感じが好みの分れそうなところ。

視聴者層 : ローティーン
顔出し  : 一部の非実況動画であり
得意分野 :
代表作  : 妖怪ウォッチ, マリオメーカー, マインクラフト
視聴者数 : ★★★★★ (登録数50万強・平均再生20万。但しYouTube分のみ)
更新頻度 : ★★★★  (毎日)
バラエティ: ★★    (YouTubeは種類少な目)
プレイ技術: ★★    (技術の必要なゲーム自体少ない)
長篇完走率: ★★★★ 
トーク話術: ★★   
トーク声質: ★★    (声が大きいのが好みの分れそうなところ)
編集品質 : ★★    (画質1080p。音声に若干難あり?)
広告頻度 : ★★★

ホラフキン

マツコ・デラックスのような声と芸風だが、本人とは関係ない。
中二病ことxyz氏との共演プレイが好評。

視聴者層 : ハイティーン以上
顔出し  : なし
得意分野 : マルチプレイ, ホラー, バカゲー
代表作  : H1Z1, GTA5, デッドライジング3, ヘビーレイン
視聴者数 : ★★★★  (登録数50万強・平均再生20万前後)
更新頻度 : ★★★★  (ほぼ毎日)
バラエティ: ★★    (定番ゲームが決まっている傾向)
プレイ技術: ★★   
長篇完走率: ★★★   (やや単発志向)
トーク話術: ★★★★  (ややゲス系)
トーク声質: ★★★   (マツコ・デラックスのような声と口調)
編集傾向 : ややハイライト志向
動画品質 : ★★★   (画質720p。テロップがバラエティ風。再生リスト未整備)
広告頻度 : ★★★★  (少ない方)

ガッチマン (賀土 万)

妻一人娘一人猫二匹の家族持ちの専業プロ実況者。妻は同人マンガ家で、近頃カドカワから『パパはゲーム実況者』を出版。
ニコニコ動画を本拠にするが、YouTubeにも少し遅れてアップロードしている。
練習済みで要領よく進めていくプレイが基本。実況はよくかむ。

視聴者層 : ハイティーン以上
顔出し  : 生放送など一部で顔出し
得意分野 : ホラー
代表作  : SIRENシリーズ(NT以外は公式にはニコニコのみ), Five Nights at Freddy’sシリーズ, Slenderシリーズ, THE LAST OF US
視聴者数 : ★★★   (登録数10万強・平均再生2万前後。但しYouTubeだけの数字)
更新頻度 : ★★★   (ほぼ隔日)
バラエティ: ★★★  
プレイ技術: ★★★★  (非初見・練習済みプレイが多い)
長篇完走率: ★★★★  (大体完走)
トーク話術: ★★   
トーク声質: ★★★  
編集傾向 : やや臨場感志向
動画品質 : ★★    (画質720p)
広告頻度 : ★★★★  (少ない方)

べるくら企画 (柏木べるくら)

声質に定評。老人のような声だが実際には30代。地声はもう少し若いようだ。
ホームレス経験ありの異色の経歴。

視聴者層 : ハイティーン以上
顔出し  : なし
得意分野 : ホラー, バカゲー, サンドボックス
代表作  : The Forest, Goat Simulator, マインクラフト, Dead By Daylight
視聴者数 : ★★★   (登録数20万強・平均再生4万前後)
更新頻度 : ★★★★  (ほぼ毎日)
バラエティ: ★★★  
プレイ技術: ★★★  
長篇完走率: ★★★  
トーク話術: ★★★★  (おとぼけ系)
トーク声質: ★★★★  (癒し系老け声)
編集傾向 : ややハイライト志向
編集品質 : ★★★★  (画質1080p60)
広告頻度 : ★★★

Shouhei

ノウハウ系の単発動画が多い。英語版の実況あり。

視聴者層 : ハイティーン以上
顔出し  : なし
得意分野 : FPS, 英語版ゲーム
代表作  : Call Of Dutyシリーズ
視聴者数 : ★★    (登録数15万弱・平均再生数万前後)
更新頻度 : ★★    (隔日程度)
バラエティ: ★★★  
プレイ技術: ★★★  
長篇完走率: ★★★  
トーク話術: ★★★  
トーク声質: ★★★  
動画品質 : ★★★   (画質1080p60)
広告頻度 : ★★    (やや多い)

ひゃくえんゲーマー

アメリカ在住で、英語版ゲームの実況が多い。実況でない動画も上げている。
Steins;Gateファンで、昔はラボメンのバッジをアイコンにしていたが、許諾が出ないらしく同シリーズの実況は一部のみ。

視聴者層 : ハイティーン以上
顔出し  : 動画上で顔出し
得意分野 : 英語版ゲーム
代表作  :
視聴者数 : ★★    (登録数10万強・平均再生5千前後)
更新頻度 : ★★★★  (ほぼ毎日)
バラエティ: ★★★  
プレイ技術: ★★   
長篇完走率: ★★★★  (大体完走)
トーク話術: ★★★  
トーク声質: ★★★  
編集傾向 : 臨場感志向
動画品質 : ★★    (画質720p60)
広告頻度 : ★★★


(2020年追記)

  • 上記の情報はだいぶ古く、特に登録者数は大きく伸びて相違が出ている。また、ここ数年のニコニコ動画の凋落は驚きであった。
  • 評価項目の選び方は今でも通用すると思っている。
  • 最近見ている実況はガッチマンばかりになってしまった。昔は弟者もよく見ていたのだが……。
  • ホラフキンはゲイの色が出過ぎるようになって見なくなった。
  • 柏木べるくらのDead by Daylightへの執着ぶりには目をみはるものがある。

日本語編としたのは英語編も書くつもりだったからだが、未執筆。

  • Markiplierが大作ゲームをやらなくなってしまったのが残念。やらないのかできなくなったのか。実況者は実況の許諾が取れるかどうかで生死が決まる。
    彼の英語は日本人にとって聴き取りやすい。母方が韓国系のハーフなのだそうだが、それも関係しているのだろうか? 他の人に比べたら相対的に楽に聴けるから、ゲーム実況をもっとやってくれたらもっと見るのだが。
  • 代わりにjacksepticeyeがゲーム実況者の正統派として浮上してきた。ラスアス2のフル実況もしていた。でもチャンネル登録数はMarkiplierの方が多い。
    なんか騒いでるだけの安っぽい動画ばかりのYouTuberの方が登録者数を集めていたりするのはYouTubeの謎だが、おそらく思っている以上にYouTubeの視聴者層が若年層に偏っているということだろう。
    この人はアイルランド系の英語で早口でもあるので、聞き取りはあまり楽でない。最近頻度が下がっているが、昔は彼が出だしによく叫んでいた”The top of the morning”はアイルランド方言で「おはようございます」の意。
  • PewDiePieは一時期差別発言で問題になったりしたものの、1億人超の登録者を集めて安泰の感。さりげなくラスアス2の実況もやっている。ただ彼は従来より完走率が低く、今回もフル実況ではない模様。
    登録者数、日本はヒカキンでも1000万人いってないから、英語圏には到底かなわないね。PewDiePieも別に英語のネイティブ・スピーカーではないのだけど……平均的日本人がPewDiePie程度に話せるかと云ったら、まあ無理だから、欧米人がうらやましい。

『The Last of Us Part II』あらすじとレビュー【ネタバレ】

 2013年に発売されたPS3のゲーム『The Last of Us』の続編。略称はラスアス2。今回はPS4をプラットフォームとしてリリースされた。いわゆるトリプルAタイトル、つまり大作タイトルである。
 前作同様に、YouTubeなどで実況動画が多数アップロードされており、日本の著名実況者では、ガッチマン兄者がフル実況している。英語圏の実況はもっと多い。なお、前作の実況で人気のあったMarkiplierは今回実況していない。
 前作同様、あるいは前作以上に映画的で物語性の強いゲーム。前作は特にシナリオが評価されて有名になった作品だが、本作ではシナリオが賛否両論、評価が割れている。

あらすじ

 先ず話のあらすじをざっくり紹介すると次のようになる。前作の主人公ジョエルとエリーは、ジョエルの弟トミーらが立ち上げた生き残りたちの町、ジャクソンで暮らしていた。エリーはジョエルからギターの弾き方を教わったりして、ぎこちないながらも親子のような付き合いを続けている。
 さて、ある冬の朝、アビーとその恋人オーウェンが引き連れた謎の一団がその街はずれにやってくる。アビーはどうやらジョエルを探しているらしい。そこへたまたまジョエルが見回りにやってきて、そのアビーたちにつかまってしまう。ジョエルに激しい恨みを抱いているらしいアビーは、同じく捕まってしまったエリーの目の前でジョエルを殺す。辛うじて生き残ったエリーは、アビーたちを皆殺しにする復讐の旅に出ることを決意する。トミーも一足先に同じく復讐に出発していたが、エリーを置いて行ったため、トミーを追う形となる。エリーの旅には、バイセクシャルの恋人ディーナが同行することになった。
 一団の身に着けていた制服から、一団がWLFという民兵組織のメンバーであろうと目星をつけたエリーは、WLFの拠点であるシアトルに向かう。シアトルに着いたエリーは、無線を傍受したり、見つけた仲間を拷問したりしてアビーの仲間たちの所在を掴んでいく。仲間たちのうち、ある者は既にトミーが殺していたが、残りの者はエリーが殺した。しかし、ディーナが妊娠しているのがわかったことなどで、結局最大の仇であるアビー本人は見つけられないまま、合流したトミーと共にシアトルを去ることを決める。ところが出発の直前、アビーの突然の襲撃を受ける。
 ここからアビーの過去へと話が戻る。前作のラストで、ジョエルはエリーを救うためにファイアフライを壊滅させたが、アビーはそのとき殺されたファイアフライの免疫学者の娘だった。ファイアフライは免疫の研究を続けられなくなり消滅したが、残ったメンバーの多くはWLFに移った。アビーたちもその一人であった。あるとき、やはり元ファイアフライのオーウェンが、ジョエルがジャクソンにいるという噂を聞きつけた。アビーとオーウェンらがジャクソンにやってきてジョエルを殺したのはそのような経緯であった。ところで、WLFは謎のカルト宗教組織セラファイトと対立しており、度々小競り合いを繰り返している。アビーもそのような戦闘に明け暮れる日々を送っていたのだが、復讐を遂げてしばらくたったある日の戦闘で、ついにセラファイトにつかまってしまう。しかし偶然、セラファイトから逃げ出そうとしていた信者である若い姉弟のヤーラとレブに命を助けられ、二人の脱走に手を貸すことになる。アビーは二人とともに、セラファイトの追手を倒しつつ、オーウェンらが隠れ家のようにしているシアトルの外れにある水族館跡に戻って来る。その後、怪我をしていたヤーラのために手術用具が必要になり、WLFに隠れて感染者の蠢く病院跡からそれらを調達したりする。そうこうするうち、残してきた母親を心配していたレブが、逃げ出してきたセラファイトの村へ突然一人で帰って行ってしまう。アビーとヤーラはそれを止めようとレブを追う。二人がセラファイトの兵を倒しながら、苦労してレブとヤーラの実家に辿り着くと、母親は死んでいた。三人は水族館へ戻ろうとするが、たまたまそのときWLFが村に総攻撃を仕掛けてきていて、三人はWLFの部隊と接触、ヤーラは殺され、せめてレブを守りたいアビーはWLFと対立することになってしまう。アビーとレブはどうにか水族館に戻るが、そこでオーウェンらがエリーに殺されているのを発見する。アビーはまだシアトルにいたエリーのところへ復讐に向かい、エリーやトミー、ディーナらを倒すが、エリーらの命だけは見逃す。
 ここで話の視点がエリーに戻る。エリーは、ディーナとディーナの生んだ子どもと一緒に、郊外の牧場でのんびりと暮らしていた。一見して幸せな生活ではあるが、その実エリーはジョエルが殺される悪夢から逃れられずにいた。そこへトミーが訪ねてきて、アビーとレブがカリフォルニアを旅しているらしい情報を掴んだという。いったんは断ったエリーだが、結局再び復讐の旅に出ることになる。カリフォルニアには人間を捕まえて奴隷にしているならず者たちがいた。エリーもいっとき彼らに捕まってしまうが、機会をとらえて逆転、そのメンバーを脅して尋問し、アビーが彼らのアジトに囚われていることを知る。早速そのアジトに向かったエリーは、彼らを倒しつつ囚人たちを解放、アジトを壊滅に追い込んだあと、海岸の処刑台で虫の息だったアビーとレブも解放する。立ち去ろうとしたアビーに対し、エリーは行かすわけにはいかないといい、二人の決闘が始まる。エリーが2本の指をなくす死闘の末、エリーはアビーを倒すが、命だけは見逃す。アビーとレブはボートで去っていく。エリーは牧場に戻るが、家の中はもぬけの殻。エリーの部屋に残されていた彼女のギターを弾くが、指を失ったのでうまく弾けなかった。

ストーリーレビュー

 さてこの物語に対する評価なのだが、世評の通り、率直に言って理解に苦しむ点があるのは確かである。
 ドラマは主人公の行いの美しさを表現する芸術である。しかし、前作では世界を救う英雄たる美少女であったエリーは、醜くなってしまった。そのようなものをわざわざその続編と銘打った作品として作って見せるのは、悪趣味というものである。素直に解釈するならば、この話においてエリーは悪役であり、主人公はむしろアビーである。
 結局のところ、前作のラストでジョエルがファイアフライを皆殺しにしてエリーを助けたことをどう評価するかが問題である。これについては、同情の余地は大いにあるものの、人類とファイアフライに対して与えた損害の大きさを考えると、正しくない行為であったと考えられる。もしエリーが、自分が死んでしまうならそんな手術は受けたくないと考えていたのなら、いくら功利主義的結論はそうであっても、人道・人権上手術は許されないので、そこから救出することは正しいという立論が可能かも知れないところであったが、エリーにそういう考えはなかったことが本作ではっきり示されていた。したがって、被害者の遺族の一人であるアビーがジョエルを殺すことは、司法制度による処罰が期待できないことも考慮すると、許される行為というべきである。すると、エリーとトミーにはそれに対して復讐する権利はないことになる。つまりこの話は出だしから無理筋なのである。厳密に云うと、アビーの身元は初め一応隠されていたのだが、ジョエルが何をした人間かは前作をプレイしていればわかっていることであり、見え透いていた。
 ただし、本作のストーリーを見ていると、ジョエルの行為に対する作者の評価は異なっている可能性もある。例えばプロローグでトミーはジョエルのしたことに賛同している。もしジョエルのしたことは全く正しいと考えるなら、エリーとトミーの復讐に正当性が出て来るので、話が変わってくる可能性がありそうである。だが、そういう立場だとすると、今度はなぜあんなにアビー編を延々とやったのかがわからなくなる。どちらにも正当性があると云いたいのだろうか。しかしジョエルが正しいならアビーは正しくない。ジョエルが正しくないならアビーは正しい。どちらかなのであって、どちらになるはずなのか、作者には話の流れをきちんと計画する責任がある。
 筆者としては、ジョエルの行為が正しいものだったとの立場には賛成しかねる。

 前作はジョエルのエリーに対する愛情が描かれる物語だったと考えることもできるので、続編たる本作は、エリーのジョエルに対する愛情を描く作品として企画されたのかも知れない。しかし、エリーがジョエルに対する愛で行動しているというだけでは、主人公にふさわしい正しさを備えていることにならない。
 愛ある行為が美しいかという点はシナリオ制作においてよく誤解される。基本的な考え方としては、美しい行為とは倫理的に云うところの不完全義務の遂行、つまり犠牲を伴うような正しい行為である必要があり、愛情とそれに基づく行為が美しく見えるのは、その愛情がそのような義務の遂行を促す原因となっている場合に限る。そしてまた、そのような義務の遂行を促す原因であれば、別に愛情でなくても何でも美しく見えるのである。ただ、倫理的行為が他者のためになる行為という側面を持っている必要がある関係上、愛情はそのような原因として制作上使いやすいところはある。
 上述のように、本作では、そもそもエリーの行為は正しくなかった。

 本作のシナリオが駄作かというとそうとも言えない。前作のレビューでも書いたが、もともとこの作者の持ち味は、物語の構成よりもキャラクター・人間関係の描写の方にある。エリーやディーナがLGBTであるという設定は世評が芳しくないようであり、筆者も何かとってつけたような設定だなとは感じたものの、作者がそういう新しい人間関係の描写にチャレンジしようとしたものではないかとも思われる。ただ、あまり成功してはいなかったのも確かであろう。また、アビー編・エリー編いずれにも三角関係のような人間関係が設定されていたが、こちらもあまり効果的ではなかった。しかしそれでも、ゲームのシナリオとしては本作のシナリオは依然としてレベルが高い。昨今のゲームのシナリオが、形式的なお使いの繰り返しの域を出るものでないものが大半である中、本作のシナリオは充分に鑑賞に値する。

ひぐらし近況

 最近ひぐらし関係のページ(特に真相を説明したもの)のアクセス数が徐々に伸びてきている。
 ひぐらしについては最近新展開があるようで、アニメの第2期分が制作され7月から放送される。また、それにあわせて旧シリーズの再放送が始まっているとのこと。直接にはこの影響と思われる。もし結末まで見ていないうちにあのページを読んでしまったなら、気の毒なことである。
 また、Steam版がついに祭囃し編に到達。それに合わせて第一章の鬼隠し編が無料公開された。
 果たして新しい世代による第二次ブームがやって来るのか? あいにくこういう社会情勢だが、落ち着いたら白川郷のインバウンド人気はますます過熱するかも知れぬ。
 それにしても、巡礼に行ったときにも疑問だったが、果たして地元ではこの作品についてどう思っているのだろうか。物語の内容からすると、諸手を挙げて聖地としてプロモーションするというのもなかなかなさそうではあるが、確か白川の観光協会などに行っても関連するものは何も置いてなかったと思う。

『ファークライ5』(ネタバレ)

 PS4版にてプレイ。

 おそらくGTAシリーズに次いで世界的に有名なオープンワールドFPS。筆者もシリーズ第三作からPS3で遊んできており、これが目当てでPS4も購入。発売後さっそくプレイした次第。
 このブログはストーリーの研究が目的なのでゲームとしての感想は簡単に済ますが、前作と比べると技術的には漸進的な進歩がみられるものの、ゲームの印象はやや薄味になった感がある。最大の変更点として、これまでのシリーズでは、far cry(遥か遠く)という題名通り、第三作以降エキゾチックなアジア地域が舞台になっていたのが、今作では米国が舞台となったことがあり、ティーンズのプレーヤーにとっては舞台がどこでも同じかもしれないが、オジサンプレーヤーにとってはこれが相対的にだいぶ陳腐に感じられる。製作元のカナダUbisoftはこれまで大作ゲームの製作費の高騰を懸念する発言をしてきており、ひょっとすると取材予算の削減を図った結果なのかもしれない。とはいえ、前作・前々作ほどの出来ではないというだけで、未だ楽しめるゲームではあり続けている。
 さてストーリーだが、梗概を紹介するならば次のようになる。主人公はアメリカモンタナ州の新米保安官補で、近く来る終末に備えることを主張するカルト教団エデンズ・ゲートの教祖「ファーザー」ことジョセフ・シードに対して出ている逮捕状を執行するため、同僚3人とともに彼がヘリで教団の本拠地に着陸するところから話が始まる。この土地は教団に支配されていて、政府は事実上機能していない。信者たちに囲まれながらもファーザーを逮捕し、ヘリに乗せて連行しようとしたところ、どういうわけかそのヘリが墜落。同僚3人はその混乱のなかで信者たちに連れ去られ、各々ファーザーが家族と呼ぶジョン、ジョイコブ、フェイス(苗字は全員シード)の3人の教団幹部のもとに監禁されてしまう。一方、主人公は教団の支配に抵抗する地元の人物の一人ダッチに助けられる。ダッチは、この地では通信が機能していないので助けを呼ぶことはできないことを告げたうえで、この地を教団の支配から解放して同僚を取り戻すよう勧める。かくして主人公は、教団との闘争を繰り広げることになるのであった。信者は武装して各地で資源や拠点を支配し、抵抗する地元の人間たちを罪人と呼んで拉致し、麻薬を使ったり(フェイス)、仲間同士で戦わせたり(ジェイコブ)、拷問したり(ジョン)することで洗脳していた。主人公は抵抗勢力の仲間を増やしつつ、教団の拠点を次々と制圧していく。時折、幹部らに拉致され洗脳されそうになりつつもなんとか逃げ出すということを繰り返しつつ、ついに三人の幹部を倒し、同僚を奪還する。次いで本来の目的であった「ファーザー」の逮捕に向かい、抵抗する信者たちを制圧。逮捕に成功するが、その直後、同地に核爆弾が投下される。からくも生き残った主人公は、私が正しかったと嘯くファーザーとともに2人で核戦争後の世界を生きることになるのだった。
 まず一般論として、敵がゾンビでもロボットでもなく人間であるタイプのFPSの場合は、人間を殺すことに正当な目的を与えておかないと、プレーヤーが敵を殺すたびに罪悪感を感じることになってしまうし、なにより一般に発売できないゲームになってしまうので、それがこの手のゲームにおけるストーリーの第一の存在意義となる。つまり敵が極悪人である必要かあるわけで、ファークライ3ではサイコパスの島の支配者、4では小国の独裁者だったのが、本作ではカルト教団の教祖に設定されているわけである。またある程度ストーリーに長さを持たせるために、複数の仲間を順次救出していくというのが目的になっているのもシリーズの定番通りである。
 その上での今回のストーリーの新機軸は、主人公が間違っていたという結末を用意するという点であり、これはおそらくUndertaleあたりの影響だろうかと思わないでもないのだが、残念ながら成功したとは云えない。第一に、そのような結論は前述したストーリーの存在意義に反するので、プレーヤーがゲームを楽しむこと自体ができなくなってしまう。これは特に2周目以降のプレイにおいて問題となる。Undertale の場合は敵を殺さないプレイが可能なように(そしてそれこそが本番であるように)作られていたが、このゲームではそうでなく、プレイの楽しさに水を差すだけである。第二に、そもそも核戦争を正しく予言したからといって教団のしてきた残虐行為が十分に正当化されるとは思えず、主人公の行為が本当に間違っていたのか疑問である。第三に、これがストーリーテリングの技術の上ではもっとも重要な過ちだと思うが、教団を倒すというのは主人公、というかシナリオライターが勝手に決めたのであってプレーヤーが決めたのではない感じになっている。形の上では、話の冒頭で、ジョセフを逮捕しないという選択肢を採ることができるように作られているのだが、これは本当に形の上だけの話で、実際そのような選択をするとゲームを遊べないまま終わってしまうようになっている。そもそも、逮捕するのが正しいのかどうかの情報が与えられないまま選択の機会だけ提供しても無意味である。こういう場合の正しいやり方は、ジョセフ・シードを逮捕するのが正しいという誤った情報を与えたうえで、話のターニングポイントでそれをひっくり返すことである。これをアナグノーリシスという。このようにして初めて、プレーヤーは自分の考えが誤っていたことに動揺するのである。同じ状況に立たされればプレーヤーも主人公と同じ過ちを犯すかもしれないというおそれを感じるからである。強いて今回の新機軸にプラスの評価点を探すなら、人を殺すことに罪悪感を感じるということで、いくらか倫理的なゲームに近づいたとは云えるのかもしれない。
 また本作では、ストーリーミッションと銘打ったメインストーリーを進めるはずのミッションに、真の意味で本題のストーリーに関係するとは思えないものが多かった。つまりストーリーミッションであってもサイドミッションのようなものが多かった。この結果、ストーリーがだいぶ散漫な印象になった。多くのストーリーミッションが仲間を集めることに関係していたが、アリストテレスが言うように、その部分がなくてもそのあとのストーリーが成り立つならば、その部分はストーリーにとって本質的ではない。ポイント稼ぎを別にすれば、仲間を集めなくてもプレイがうまければ拠点を制圧して幹部を倒すことは可能である(幹部との対決は仲間を引き連れていけない仕様なのでなおさらである)。本作ではAIで仲間と戦えるという機能が入ったのでこのようなミッションが多数入ることになったと思われるが、サイドミッション扱いとすべきであった。

白川郷巡礼

 『ひぐらしのなく頃に』に出てくる雛見沢村のモデルで、背景映像の一部も撮影された白川郷に行ってきた。
 前々から行ってみたいと思ってはいたのだが、なにぶん東京からだいぶ離れているので躊躇していた。しかし実際行ってみると想像したほどには遠くなかった。自動車で直行すれば片道5時間くらい。近くはないけど1泊すれば余裕、頑張れば日帰りもできなくはない距離である。松本と高山を結ぶ国道158号が長野オリンピックがらみでよく整備されたのが大きい。また2002年には白川郷に東海北陸道の白川郷ICが開通し、高山からのアクセスも便利になっている。本編で何度か圭一の両親が車で長時間かけて東京に行っていたが、その頃と比べたらかなり所要時間が短縮されているはずである。
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 いまや白川郷は泣く子も黙る世界遺産指定地。正真正銘の観光地である(世界遺産が本当は観光地を指定する制度ではないのはわかっているが、事実上そうなっているわけである)。バッチリ整備された有料駐車場に次々押し寄せる観光バスから吐き出される観光客らが辺りを歩き回り、白川郷の中は平日にも関わらず人通りが多かった。雛見沢の寒村のイメージとはほど遠い。外国人観光客も多く(中国系が多いが欧米系もちらほら見かけた)、白川症候群なんてものがあったらあっという間に世界中に感染が広まるに違いない。
 現地でひぐらしファンと思しき人間を見かけることはなかったが、オヤシロさまこと古手神社のモデルとなった白川八幡神社はこの通り。
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 初リリースから10年経つのに大した盛り上がりであるが、先ごろ原作者同伴で巡礼ツアーがあったとの話も聞くので、その関係もあったのかも知れない。
 ただ絵が描いてあるのが全部ひぐらし関係といっていいのかどうかはよくわからないところがある。まあ素人が描いた絵だから必ずしもうまく描けているとは限らないからということもあるが、ひぐらしシリーズは原作の竜騎士07の絵が個性的すぎることもあって、アニメ版やマンガ版、コンシューマゲーム版やSteam版などバージョンごとにキャラクターの絵がバラバラであり、原作をプレイしただけではどのキャラクターなのか判別しがたい顔もあるのである。
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 現地でほかに意外だったのはこの圭一の家のモデル。実際には家ではなく白川村の下水処理施設である。屋根が切妻風になっているものの実態はRC造りの公共建築で、いくら新築で大きめの家が白川に乏しいとはいえ、これを圭一の家にするというのは、現地を見たあとだとかなりの力技に感じる。本当にここに住んでいたら確かに御殿と呼ばれても仕方ない。

 今回本格的にスマホのF-02Gで撮影してみたが、ポケットに入れておくといつの間にかレンズが汚れ、ソフトフォーカスがかかったようになってしまうのには閉口した。上2枚も若干その傾向があるが、これでもましな方である。

2018.08追記:
 その後白川郷を再訪。再度撮影してきた写真がこれ。

 作品のタイトルスクリーンをよく見たらこの位置の方がオリジナルに近い。この記事の最初に掲げたほうの写真を撮った天守閣展望台は位置も高いし土産物屋などもあり、白川郷の展望台としてメジャーかと思うのだが、今回のこの写真はそこから少し下ったところにある荻町城跡展望台の、それも少し奥まったところにある展望ポイントから撮影したものである。10年以上経つというのに、画面上に見えているマツの様子があまり変わらないのが嬉しいところ。
 聖地巡礼の際は、天守閣展望台だけでなく荻町城跡展望台を訪れるのを忘れないようにしたい。

『Her Story』

 SteamにてPC版を購入。日本語化パッチを利用してプレイ。

  • 90年代に起こったある殺人事件についての警察での取り調べ映像が格納された検索システムを模した作品。このシステムでは、一つ一つが十数秒から1分程度にバラバラにカットされた取り調べ映像を、その発言中の単語で検索できるようになっており、検索した単語ごとに映像を上位5件まで閲覧できる。これを使って、なるべく多くの映像を閲覧して事件の真相を把握するのが目標らしい。
  • ストーリー性の面で昨年のPCゲームの中で比較的高い評価を得ていた作品ということで購入したのだが、わかりにくいわ面倒だわつまらないわで完全に失敗。システムが不親切すぎるし、何が起こったのか最後までプレイしてもさっぱりわからない。仮に理解できたとしても(ネットで検索すれば真相は出てくる)、出来事そのものがすでに完全に終わってしまったことなので、話に全くサスペンスがない。久々に金返せと云いたくなる作品だった。話をバラバラにしただけで面白い作品になるなら苦労はない。ストーリーやゲーム性というものをあまりに軽く見た作品である。

ひぐらし再訪(3) 劇中世界における幻想的設定の実在性

 『ひぐらし』第一話のお疲れさま会で、祟りによるものとしか思えない事件が過去にいくつも起こっていたにも関わらず、ほとんどの読者(テストプレイヤー)が劇中世界における祟りの実在を信じていなかったと報告されていたが、これはもっと祟りの実在を支持する読者が多いことを予想していた作者の竜騎士07氏にとっては深刻な問題であったはずである。一体どうしてこう解釈されたのだろうか。なお、もちろんこの問題は地の文で祟りの実在が直接描写されていないことが前提の話である。
 祟りは現実世界に実在しないからというのではもちろん答えとして十分ではない、だって劇中世界はフィクションなのだから祟りが実在したっていいはずではないか。氏はその後この点についての結論として、『うみねこ』の中で「登場人物の中に一人でも疑っている人間がいる限り、その物語世界内に幻想的な事実が実在するとは解釈されない」という説を(登場人物たちの口を通して)披露した。この説は『うみねこ』シリーズのプロットの中心的構成原理として使われている。だがこの説は本当だろうか。怪談ものなどで、幽霊の存在を信じない「愚かな人間」が不審な死を遂げるといった話はいかにもありそうではないか。疑っている人間がいるだけでは幻想的設定が否定されることにはならないのではないか。
 これはやはり、祟りが実在したという結論になったとしたときに読者がそれに納得できるか、そういう状態にあるかどうかが大事なのではないか。第一話の場合、すべてを祟りで説明しようとしても説明しきれないところが残ってしまう。例えば鬼隠しについての詳しい説明はこの時点では出てきていないから、失踪が説明できない。富竹が殺されたとき人間に囲まれていたという件もそうだ。また、二人が圭一を襲ったときの手段が注射器であったというのも祟りよりも科学的な手段を暗示する。
 「登場人物の中に一人でも疑っている人間がいる限り、その物語世界内に幻想的な事実が実在するとは解釈されない」というのは、幻想的実在を肯定しようとすると無理が生じる状況では、その結果として登場人物の方にも納得できない人間が出てくるということに過ぎないのではないか。

『ひぐらしのなく頃に』再訪(2) 真相の設定まとめ【ネタバレ】

 シリーズ最大の謎であるオヤシロさまの呪いの真相を簡単にまとめると次のようになる。完全なるネタバレなので、未プレイの方は決して読まないことをお勧めする。

(雛見沢症候群)
 雛見沢には古来より雛見沢症候群と呼ばれる感染性の土着病があり、雛見沢の住人はほぼ全員がこれに感染している。しかしこの病気の病原体の検出には技術的に難しい面があり、当の住民自身を含め、この病気の存在は一般に知られていなかった。この病気は、感染してもはじめ症状がないが、患者が強いストレス(特に疑心暗鬼)にさらされると劇症化し、猜疑心が強まったり幻覚を見たり攻撃性が強まったりといった精神病の症状を生じて、周囲の人間に危害を与えたり自殺したりといった事態に至ることもある。
 鷹野はその軍事利用をもくろむ秘密組織に属し、入江はその下で当地において表向き診療所を開設してそこで秘密裏に雛見沢症候群を研究している精神外科の研究者である。また、富竹はそれを支援する自衛隊の連絡将校である。

(一年目の事件)
 昭和50年ごろ、雛見沢にダムの建設計画が持ち上がり、雛見沢全体がダムの底に沈むことが見込まれたため、地元住民の間で激しい反対運動が起こった。数年に及ぶ戦いの末、秘密組織からの政治的圧力などもあって結局建設計画は撤回されたが、その反対運動の末期の昭和54年に、雛見沢に設置されていたダム建設準備事務所の所員が、雛見沢症候群に感染したうえ、激しい反対運動にさらされたストレスで劇症化し、所長を殴り殺すという事件が発生する。この所員は、事件直後に鷹野とその部下らによって秘密裏に診療所に連れ去られて研究材料とされたため、部外者からは失踪したように見えた。この事件の真相は、雛見沢症候群の存在自体が世に知られていない以上、もちろん警察にも地元住民にもわからなかったが、たまたま事件が地元の守り神とされている「オヤシロさま」の綿流しの祭りの晩に起こったため、迷信深い地元民の一部は、古来より雛見沢に伝わる伝承の教える「オヤシロさまの祟り」と「鬼隠し」によるものではないかと噂した。

(二年目の事件)
 ダムの建設推進派だったために村内で肩身の狭かった北条一家は、綿流しの祭の日に村にいることを避け家族旅行に出かけるが、もともと雛見沢症候群の症状の重かった佐都子が、そこで両親を崖から突き落としてしまう。このときの父親は義父で、佐都子との関係がうまくいっていなかったことがこの「事故」の背景にあった。
 入江の尽力により、佐都子については、拉致されて研究材料とされること、また自傷行為に及ぶほどに発狂することからは免れた。この前から、入江は、特に重要な感染者と考えられていた梨花を対象とした研究を開始しており、その成果としてできた治療薬が佐都子の致命的な悪化を防いだ面がある。
 両親がいなくなった結果、佐都子と悟史は叔母夫婦に預けられることになった。

(三年目の事件)
 症候群の研究に梨花を協力させることに反対し始めた母親が邪魔になったため、鷹野指揮下の特殊部隊が両親まとめて毒殺したというもの。ずいぶんと単純な真相であり、症候群の劇症化が原因でないという点で異例である。この年以降、事件が綿流しの日に起こる理由は、オヤシロ様の祟りの伝承を利用した隠蔽を目的としたものとなっていく。つまり、1年目と2年目の事件が綿流しの日に起こったのはほぼ偶然で、それ以降は人為的なものである。
 雛見沢症候群の研究を進めるための研究材料として、より多くの劇症感染者を必要としていた鷹野は、この頃から、一部の住民の噂を利用し、綿流しの晩にオヤシロさまの祟りがあると言いふらして住民にストレスを与え劇症化させることを画策していたのではないかと思われる。

(四年目の事件)
 佐都子と悟史は引き取られた叔母夫婦とうまくいかず、二人の症状は次第に悪化する。劇症化した悟史は、叔母を殺したうえ、綿流しの晩の噂を利用してそれを隠蔽しようとするが、かねてより悟史を診察していた入江と鷹野らに結局連れ去られて失踪する。悟史は劇症化したとは言うものの、事件の隠蔽を考える程度には正気を保っており、いくらか症状が軽かったようである。とはいえ、佐都子に効いた治療薬も悟史には効かず、これ以降診療所で昏睡のまま秘密の長期入院を余儀なくされる。

(五年目の事件)
 以上の設定を前提として本編で語られる五年目の事件が起こっている。五年目の事件には、過去4年(正確には3年)続いた雛見沢症候群患者による事件と、それとは別の、発狂した鷹野による滅菌作戦の二つの筋がある。
 前者の内容はループによって内容が違うが、とにかくこの年も例年通り雛見沢症候群の劇症発症者が出て身近な人間を殺してしまうという内容である。トリッキーなことに、この年だけはこの種の事件が綿流しの晩から基本的に数日遅れて起こっている。この年、可能性としては雛見沢を一時離れた引け目を感じていたレナが綿流しの晩に発症することもあり得たが、魅音ら仲間たちの尽力でストレスが軽減され発症を免れたということだと思われる。圭一や詩音、また罪滅し編のレナの発症は、発症までの経緯が違うので、綿流しの日ピッタリにはならなかったわけである(これらの発症には、大石が現われて園崎家陰謀説を吹き込むことが関連している)。一方、皆殺し編における圭一による殺人は、祟りとの混同による隠蔽を図ったので、4年目と同様に綿流しの晩になった。なおこの年は、すでに研究が概ね完成したことと、滅菌作戦の実行との兼ね合いからか、劇症化した患者が鷹野らに連れ去られない場合もあるようである。
 その代わりに綿流しの晩に起こったのが、鷹野と富竹の仲間割れから生じた富竹殺害事件である。この年、雛見沢症候群の研究が打ち切られることになり、鷹野は半ば発狂した。そのために鷹野は政府に「滅菌作戦」を実行させようと考えるようになった。滅菌作戦とは、雛見沢症候群の「女王感染者」である梨花が死亡することがあると、雛見沢の住人たちがそれをきっかけに一斉に劇症化して暴れまわり、日本社会を大混乱に追い込む可能性が高いという説に基づいて、それを防ぐために雛見沢の住人を全員毒ガスで殺害するという作戦である。この年の綿流しの日の数週間後、鷹野は梨花を殺害することにより、自衛隊にこの作戦の実行を強いるつもりで計画を進めており、いくつかのループではそれが成功して実際に実行された。ただし、この鷹野の女王感染者説は結果的には誤りで、それが露見したループでは実行されないこともあった。
 ともあれ、滅菌作戦の実行に反対していた富竹はこの晩、鷹野に雛見沢症候群の病原体を注射され、精神に異常をきたして自殺に追い込まれた。綿流しの晩に実行されたのは祟りの噂を利用した隠蔽のためである。鬼隠しの伝承と帳尻を合わせるため、この事件のあと鷹野は身を隠した。

 本来綿流しの晩に起こるべき事件を五年目にかぎって数日遅らせ、その代わりに綿流しの晩に無関係な事件を突っ込むというミスリードは、やりすぎといえばやりすぎだが、周到な構成である。このミスリードのせいで、読者はまるで倒叙もののように4年間続いた事件の5年目そのものを目撃しているにも関わらず、そのことに気づかない。何か別の事件が起こっているように見える。さらに言うなら、第一話である鬼隠し編の展開はあまりに自然すぎて、圭一が劇症化していなくても発生し得る内容であったことも紛らわしかった。
 また、通常の推理小説ではトリックスター的役割を担う刑事役たる大石が、本作ではかなりの賢さを見せているため、レッドヘリングに過ぎない園崎陰謀説にかなりの説得力が出た。
 それはともかく、本編の後半は、この5年目の事件と滅菌作戦をいかに防ぐかをめぐって展開する。

2018.8追記: この記事は比較的来訪者が多いので、このブログのひぐらしネタをカテゴリにまとめました。聖地巡礼などもあります。古い記事では現在の私の立場と違う記述もあります。

2018.9蛇足:

  1. 上の説明では滅菌作戦が実行されなかったのがどの話なのか特定しませんでしたが、綿流し編とその裏返しの目明し編で実行されなかったことは特に問題ありません。問題は鬼隠し編で、鬼隠し編の結末では、梨花が死んだり、滅菌作戦が実行されたりという描写がなく、圭一の事件の捜査が通常通り進められたような表現になっていました。しかし、のちに皆殺し編の中でやっぱりこのときも梨花が死んでいて滅菌作戦も実行されたようにストーリーが修正されました。このことは、他の記事でも少し触れたように、鬼隠し編執筆時点では滅菌作戦の構想がなかったということの傍証と考えることもできます。しかしその場合、富竹はなぜ死んだのかが宙に浮いてしまいます。滅菌作戦とは全然別の理由で鷹野と対立して殺されたと考えることもできますが、元の話と離れすぎるので、あくまで私見ですが、滅菌作戦の構想そのものはあったが、当初の設定では、鷹野が女王感染者だと思いこんでいたのは梨花でなく魅音だったと考えてみてはどうでしょうか。
  2. 梨花がネコ言葉で話すのは、雛見沢症候群のモデルがネコのフンから感染するトキソプラズマで、梨花こそが雛見沢ウイルスの根源的な感染源だからと考えられます。ただし、鷹野の言う女王感染者であるかは別の問題です。
  3. 鬼隠し編で圭一が発症したのは、女王感染者から離れて東京の葬儀に出席したからだという説もありますが、私は上述のように女王感染者説は誤りという立場で、圭一の発症はあくまで大石との接触によるものと説明しています。この「上京原因説」は皆殺し編で梨花が説明している説なので、軽視はできないのですが、しかしこれは女王感染者説を信じている入江から聞いた話をもとにした梨花の考えに過ぎないので必ずしも信頼できず、またこう解さないと、滅菌作戦が実行されないことがある点の説明がつかなくなります。鬼隠し編冒頭なども確かに思わせぶりなのですが、これは作者のブラフと解釈することになります。
  4. 鬼隠し編で大石との接触後に圭一が仮病で入江診療所に行った際、入江から劇症化のための注射か何かをされたのかどうかというのも興味深い論点ですが、そもそも研究の中止が既に決まり滅菌作戦直前の時期である上に、入江自身は鷹野ほど危険思想の持ち主というわけでもないので、単なる感染者ならほかにいくらでもいる中でここで敢えて劇症化患者を作り出す動機がなさそうですし、以上を前提とする限り、大石に会ったあとなので既に劇症化しているわけですから、ここでそれを入江に悟られたために終盤で入江らがやって来る原因となっただけで、劇症化そのものの原因となるような何かをされたわけではないものと思われます。
  5. 以前はここで、2年目以降の事件は、鷹野が流したオヤシロ様の祟りの噂のために出た劇症化患者によるものとする解釈で説明していたこともありますが、祭囃し編の内容を前提とするとやはり無理があるため、今の説明に書き替えました。作者の意図としては、むしろそのような役はオヤシロ様の使いこと大石に担わせるということだろうと思われますので、上の説明もその立場に沿ってしてあります。
    しかし個人的には、未だに、祭囃し編で作者が示した真相よりも、以前の解釈に立つ真相の方がこのシリーズらしいと思っています。特殊部隊を滅菌作戦以外に持ち出すのはあまり都合がよすぎる感がありますし、園崎陰謀説ないし村ぐるみ説は確かに大石が吹き込むのですが、より重要なオヤシロ様の祟りは鷹野が吹き込んでいるのに、後者が無視されてしまうのも違和感があります。

ひぐらし再訪【ネタバレ】

 ここのところ『ひぐらしのなく頃に』を復習している。

 振り返ってみると、シリーズ前半の出題編3話で起こった事件は、大半が本筋である鷹野の陰謀とほとんど無関係であった。鬼隠し編で圭一が魅音とレナを殺してしまうこと、綿流し編で魅音が佐都子や梨花や詩音を殺してしまうこと、祟殺し編で圭一が鉄平を殺してしまうことは、いずれも鷹野らが計画したことではなく、また鷹野らの陰謀がなければ起こらなかったとも必ずしも言い難いものであり(過去4年間綿流しの日にストレスから雛見沢症候群の重症者が発生して殺人を犯したり自殺すること自体は鷹野らにかかわらず自然に起こっていた、また祭具殿への侵入は鷹野の個人的興味により陰謀がなくても行われ得る、との解釈を前提とした場合。ただ5年目の殺人と失踪だけは鷹野の陰謀と若干の因果関係を認めざるを得ない)、鷹野からみて偶然に近い。これらは精々、雛見沢症候群という共通の原因を持っているという程度の関係にしかない。
 共通の原因をもっている以上不自然な偶然とは扱わないというのがドラマの世界のお約束である。ミステリーはこのルールに大きく依存している。だからこれらの後に鷹野の陰謀が出てくることは一応不自然ではないものと扱うことになる。連続失踪の方は鷹野の陰謀の結果でもあったし。しかし描写されるものという観点から見た場合、シリーズ前半で描写されるのは主に雛見沢症候群の危険性であって、鷹野の陰謀の危険性ではないということになる。これは本筋から外れているのではないか。読者をミスリードするという方向に偏り過ぎているようにも思われる。推理小説はこういうものなのだろうか。
 実は、鷹野の陰謀という要素は比較的後になってから追加されたのではないかとする説がある。もしシリーズから鷹野の陰謀という要素を除去し、入江あたりが雛見沢症候群が真の問題だと突き止めてめでたしめでたしで終わるような話にシリーズを書き換えたとすると、上で述べたような問題は大幅に軽減される。ひょっとすると、元々の構想はそのようなものだったのかも知れない。

 またダム建設計画が雛見沢に持ち上がったことは読者や圭一をミスリードする上で重要な役割を果たしたが、これは雛見沢症候群とは共通する原因すらない純然たる偶然である。ドラマにおいて純然たる偶然を完全に排除することはできないが、偶然が増えれば増えるほど実現確率が下がり、描写の強さが弱まる。鬼隠し話で言えば、雛見沢症候群が危険だといっても、圭一の殺人はダム建設計画という偶然がなければ起こらなかったということになるから、雛見沢症候群が危険だという描写を弱める方向に働く。もっとも、偶然だったということは最後まで読まないとわからないから、読んでいる途中にはあまりそう感じさせない構成ではあるが。

 ドラマの主題とは結局その中で起こる出来事の共通原因のことなのだろうか。そうであるような気がしたこともあるし、そうでないような気がしたこともある。
 とにかくこの主題というのは作劇における呪いのような概念である。