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『アナと雪の女王』(2013)


 WOWOWにて鑑賞。

  • 去年大流行したご存じアナ雪。しかしアメリカでの初公開は2013年で、公表年としては一昨年の作品ということになる。シナリオは大したことないようだったので、そのうちWOWOWでやるだろうと思って見送っていたら意外と時間がかかった感あり。放映権の交渉が難航したのかもしれない。今般の放送では、ディズニースペシャルと称する特集を組んでその他のディズニー作品と一緒に放送している。さては抱き合わせで買わされたか?(邪推)
  • あらすじはWikipediaにあるのでまた省略。最近Wikipedia日本語版では映画のあらすじをきちんと最後まで書くようになったのだろうか。
  • まあとにかく歌曲の出来は確かに秀逸である。普通ミュージカル映画というのは、それなりにヒットしたものでももう一度聞きたいと思えるようないい曲は大抵1曲だけ、オマケしてもう1曲くらいで、その他はイマイチな出来のものが多いもの。しかしこの作品の歌曲は粒揃いで平均的にレベルが高い。こうなるとシナリオがイマイチだったとしても歌曲シーンだけで十分間が持ってしまう。吹き替え版と字幕版の両方観たが、やはり音楽的には字幕版の方がいい。
  • シナリオ面。原作はアンデルセンの『雪の女王』だそうだが、エルサを前面に出すために相当無理をして改変したらしく、プロット面は特に終盤にかけて無理があったようにも思われる。一応構造を分析しておくと、実質的に主人公はクリストフで、彼の目標はアナを助けること(つまりパトスはアナの死亡)、葛藤になっているものはアナへの愛情、葛藤の解決はハンスが悪人だったというアナグノーリシスによる。いずれにしてもメロドラマ的な葛藤なのであまり深刻なものにならないが、コメディだからこんなものでいいのだろう。
  • 一方でダイアローグはコメディとしてかなりよく出来ている。主人公のアナは楽観的で人を信じやすい性格で、それでトラブルに巻き込まれるのではあるが、そこが観客から見て魅力的なキャラクターに仕上がっている。脚本家が女性であることもあってか、女性キャラが率直かつリアルに描けているのもいい。その代わり、男子キャラは少々理想化されているようであった。2人の男子のどちらを選ぶかという話であるというところも含めて、このあたり、『時をかける少女』(2006)となにか同じ匂いがする。
  • 公開時に『Let It Go』の吹き替え版の訳詩についてネットで議論があったが、全編通して観てみると、やはりあの訳詩はあまりに前向き過ぎるように感じられた。あそこはやはり絶望的なシーンなのではないだろうか。
  • この話の寓意をどう解釈するか? 元の童話を相当捻じ曲げているのであまり悩んでも仕方ないのかもしれない。

70点/100点満点

『STEINS;GATE』(ゲーム)

 Windows向けNitro The Best!シリーズ ダウンロード版でプレイ。

  • 最近しきりに世間を騒がすnitro plus界隈。物語愛好家としてはなにか一つプレイしてみなければなるまいと思いつつもなかなか機会がなかったが、なぜか今になって衝動買い。3000円と安かったこともある。「アドベンチャーゲーム」に分類されるゲームを購入したのは、確かエルフソフトの『同級生』あたりが最後で、そうすると……なんと約20年ぶり!?
  • あの堀井雄二のデビュー作『ポートピア殺人事件』を挙げるまでもなく、アドベンチャーゲームはPC黎明期にはゲームの花形だったが、その後次第にRPGなどの他ジャンルのゲームがストーリー性を強めるのにつれ押しだされるようにして衰退、上述の『同級生』あたりからほとんどもっぱらエロゲー・ギャルゲーの分野でのみひっそりと生き続けてきた……というのが個人的な理解。本作も発売元のnitro plusはギャルゲーメーカーであり、いちおうその系譜に属する。ただ、エロシーンはないし、キャラクターデザインもあまり「萌え萌え」していない。
  • アドベンチャーゲームの世界では、チュンソフトの『弟切草』あたりから読み物としての性格を強めるトレンド(ノベールゲーム化)が確立したらしいと仄聞してはいたものの、実際プレイを初めてみてやはり驚いたのは、アドベンチャーゲームなのにまったく選択肢が示されないこと。結局一つも「選択」をなすことなく「不可逆のリブート」エンディング(いわゆる鈴羽ED、マルチエンディングのうちの一番手前の結末)まで進んでしまった。これはまさにアドベンチャーゲームというよりノベルゲームである。
  • これで終わりではあるまいと思って攻略サイトを覗いたところ、主人公の持っている携帯電話に送られてくるメールに返信するかどうかでストーリーが分岐するシステムだったらしい。マニュアルが付属しないこともあって、受信は直観的にできるが送信方法がわかりにくい。
  • 一番初めのエンディングにたどり着くまでに要したプレイ時間は9時間弱。普段親しんでいる映画やドラマと比べると、長編映画よりははるかに長く、ドラマだとここまでで1クール11話くらいの長さとなる。トゥルーエンド到達・100%達成までは、攻略サイトを見ながらで約24時間を要した。特に後者は新しいストーリー分岐に達するまでの「作業」に時間を要し、正直オジさんにはちょっとしんどい感もあった。ただ、尺が長い分、話の前提となる設定や人間関係の描写に時間が掛けてあるのが悲劇の効果を高めていて、そこのところは非常に丁寧でリッチな感触を受けた。逆に言えば、映画やドラマに見られるような、内容にかかわらず枠に合わせなければならないという制約は、想像以上に話を貧しくするのだなあと思う。
  • とはいうものの、ギャルゲーというフォーマットに拘ったことによる別の意味での若干の制約も感じないではなかった。それはつまりマルチエンディングシステムに由来するものであって、まずフェイリスとルカ子のエンディングに至るルートは、それなりの良さは認めるものの、この話の本質にかかわるとは思えず、やはり不要であったと思う。そもそもエロゲーにおいては 女性人物を落とす=エロシーン→ステディな恋人同士に という基本構造が外せないためにマルチエンディングのフォーマットを厳守せざるを得ないわけであり、ギャルゲーである本作もそれを踏襲したものと思われるが、この作品の場合不要なルールである。したがってむやみに女性の数を増やす必要はない。またさらにいうなら、本当は紅莉栖とまゆりのエンディングも、トゥルーエンドに組み込まれているのだから、なくてもよかった。鈴羽のエンディングだけは独自の価値があるので捨てがたい。
  • 追記: 改めて考えてみると、悲劇としてはまゆりEDの方が「真のエンディング」なのかもしれない。アリストテレスいうところの「実行した場合」(『詩学』1454a)である。
  • シナリオについては後日更新。以下は取り急ぎ。
  • とにかく非常によく書けたアリストテレス的悲劇(メロドラマ的でもあるが…)である(劇中のセリフに一度だけ「アリストテレス」(ついでに「ホラーティウス」も)という言葉が出てくるが偶然ではあるまい)。葛藤・ミステリーの力で観客をひきつける力が強い。エートス(キャラクター)はラノベのパターン通りではあったが、上述のように描写に丁寧に時間を掛けているのであまり不自然に感じない。
  • ストーリーのネタ元についてだが、既に各所で指摘されているように、これはあきらかに「時をかける少女」である。本作の初版であるX-box 360版 の公表年が2009年、劇中でカギとなる日が13日、またタイムリープという用語も出て来ているが、なんといっても話のテーマが細田版そのまんまであり、いくら筆者が「何を観ても時をかける少女に見える病」という不治の病にかかっているとはいっても、これは無関係とは言えまい。またそのほか、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』トリロジーや『バタフライエフェクト』など、タイムトラベルものSF映画のアイデアもごった煮にしたようなプロットである。
  • トゥルーエンドの真のスタッフロールの後のエピローグは基本的に蛇足であるように思われた。(ネタバレを防ぐために曖昧な言い方になるが)『バタフライエフェクト』のラストに相当するシーンをワンカット程度含めてあれば十分だった。

88点/100点満点